強く生きる

HiGH&LOWと山田裕貴関連用。本業はオタクです。

映画「万引き家族」ネタバレ感想

公開二日目の舞台挨拶付きで観てきました。小説版やメイキング番組はノータッチで本編のみ。万引き家族だけでなく「そして父になる」なんかもネタバレしてます。余談ですが、TOHOシネマズ日本橋でヅカライビュみたときにプレミアボックスシートの隔離感に感動して今回も同じ席種でとったんですけど、六本木のTOHOは壁が高さも幅も日本橋と全然違っててボックスシート界のレオパレスって感じなので気を付けてください。

 

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観た直後のtwitterから。

万引き家族、すっごく疲れたしこの後また木曜に観るのか…ってなった。一週間ぐらい間あけて気力回復してからにさせて欲しいな 上映前舞台挨拶でよかった。後だったら死んでしまう…劇場でて、あったかいものお腹にいれてようやくひと心地ついた感じ。

・映画は娯楽だと思ってるので、世界が閉じてる作品が好きですが、そういう意味では万引き家族は完全に開いているし、ラストシーンもエンドロールの曲も、どこにもエンドマークはつかない。本編観て、舞台挨拶見て、出てきたところが六本木ヒルズってしんど過ぎるわ。

・11時回の挨拶で監督が(安藤サクラさんが評したように)納豆ご飯のように毎日観てもいい作品なのでぜひ繰り返し足を運んでもらって~といってて、正気か?!って思った。いやそう言うしかないけどさあ。気力と体力に余裕あるときしか観れないよこんなの

万引き家族、予想以上に現実に今起こっている事件とリンクしててすごいしんどかった。監督側が言及することはできないだろうけど…「作った」のではなく「作らされた」のだと感じたりするのかな。これが今という時代としか言いようがない。

・是枝作品では花よりもなほそして父になるが好きなんですけど(察して)、そして父になるを観た後の気持ちが自分の持ってる幸福に感謝してより善く生きよう!(前向き)なのに対して、万引き家族は自分の持ってる幸福に感謝してより善く生きよう(呪い)って感じ。

・推しちゃんはきつい顔とかわいい声のアンバランスさが一番の魅力だし、それが人を不安定にさせて揺さぶりをかけるとこが良いと常々言ってるんですけど、北条保役はそれを遺憾なく発揮してましたね…出番一瞬だったけど、これ以上やっても生々しくなるし、ほんの一瞬で必要な情報と気配を出しきってた

・整った、整えられた容姿とその内側の荒んだ暴力の気配がさあ…突然爆発しそうな不安定さもぴったりだし、監督、オーデしたときすげーいいの見つけた!って思ったでしょ?!ってきいてみたい( ◠‿◠ )

万引き家族、ゼリー二本を渡す柄本明は燭台もあげたという司教のようであるし、りんはフォンティーヌだし、立体交差から落ちるのは欄干から落ちるのを想起させるしもしかしてこれもレミゼなのかという疑惑が…何よりどんな環境に育っても受けた愛によって善き心は生まれ出ずるというのはもろレミゼやん

レミゼ、マイベストオブよくわからん話なので、世の中の人のレミゼ好きやな!という状況に接するたびに、そ、そうなんや…という気持ちになる みんなレミゼ好きだよね…

前回「うなぎ」がパルムドール取った時に、海外の権威ある賞を取った作品ということで普段その手の映画を観ない人たちがわざわざ観に行ってぽかーんとなってるらしいという空気だけはぼんやりと覚えていて、是枝作品は割と好きなのでちょいちょい観てるんですけど今までのが取れなくて今回取ったということはそういうことなんだろうなあと思って観に行きましたが大体予想通りでした。フランス人、ゆがみねえな~!

2回あるうちの上映後に挨拶がある方をとったんですけど、しんどすぎて挨拶パスして帰ろうかなって割と本気で迷ったし(ちゃんと見た)、終わった後、ヒルズでご飯食べてたら隣の席でIDぶら下げた休出らしきリーマン二人組が当たり前のように3000円のランチを食べて仕事に戻っていったのも、他店と価格帯が全然違うヒルズ内のアローズでカットソーを手に取ったらメゾンマルジェラで、値札にうへあってなりながらそういえば登壇時の安藤サクラさんは赤のTabiパンプス*1履いてたなって思い返すのも、土曜の午後のヒルズにあふれている犬連れてベビーカー押してる、つまりここまで徒歩か自家用車で来ることができる環境の家族連れの山を見るのも全部全部しんどかった。こういう作品を観た後に「感動して泣きました!人間として観るべき素晴らしい映画です」と言える無邪気さが欲しいなって思うし、でも死んでもそんなくだらない人間にはなりたくないと思うし、そう考える自分の性格の悪さと潔癖さが嫌になるし、最終的になんで1800円と2時間を払ってこんなに嫌な気分で劇場から帰って、さらにその気持ちを数日ひっぱらなきゃいけないんだという結論になるのでやっぱり社会性の強い作品ってあんまり好きになれないんだよなあ…。
でも映画としてはやっぱり面白いし、よく出来てるって思います。退屈さはないしちゃんとエンタメもしている。2時間の大半を一見どうってことのない日常の描写にあてつつそこにしっかり色々仕込んで飽きさせないってすごい。是枝監督、好きだけど嫌いだ~!この人絶対性格悪いし、でもその性格の悪さがそのまんま面白い映画を作るスキルにイコールだなって改めて確信しました。0から1を生みだす力って何かを持っていないところから生まれるんだよなあああ。エンドロールでリリーフランキーの名前が先に出てきたことに驚いてしまったぐらい、安藤サクラを観る映画でした。尋問で泣くシーンもやばかったけど、面会室で祥太を拾った車の話をするところでタオルがぐっしょりするぐらい号泣した。あんなん辛い。観ていて気持ちの持ってきどころがない。

そして父になる」は福山雅治が入れ替え犯の看護師のところに慰謝料を返しに行ったら継子が母を守ろうとするところで一番わんわん泣いたんですけど、あのシーン、正義は100%福山雅治の側にあって、でもその正義が情に敗北するところに観客はカタルシスを得るわけじゃないですか。そもそも「そして父になる」も答えなんてない話ではあるんですけど、もしこの話から少しでも世界を良くするためのなんらかの具体的改善策を出すとするなら「新生児室のワンオペはダメ絶対」ぐらいで、起こってしまった時点で「答えなんてない」が答えなんですよね。ものすごい意地の悪い言い方をするならば、そして父になるは高学歴高身長高収入でかつ最高にイケメンの、いわば大衆にとっていけすかないポジションである福山雅治が、にも関わらず大衆の愛と情に敗北し、そのかたくなさを捨てて心を開くまでの物語でもあるし(ついでにそのかたくなさにもちゃんと納得可能なバックボーンがあるので福利厚生が手厚い)観客は良心の落とし所を探す必要もなく、泣きたいだけ泣いてデトックスして良い話だったねーで帰れるんですけども、万引き家族にはそれがなくて本当にしんどい。
信代(安藤サクラ)には愛があった。治(リリー・フランキー)は「(盗みの他に)教えられることがなかった」と言うけれど、愛されていなければ人を思いやる子にはならないという世界において、盗みしか教えられなかったはずの祥太(城桧吏)は、妹に盗みをさせてはいけない、こんな生活は終わらせなければいけないという正しさを持った子に育った。初枝(樹木希林)はちゃんとそこそこ幸福な気持ちで家族の中で死んでいったと思う。対して、お金があり、利発な妹の存在によって子供への教育も行き届いていると示されている家庭でも、そこに居場所がなかった女の子がいる。役者陣の演技の良さは言うまでもなく、全てに説得力があって、身を寄せ合って生きている家族の描かれ方があまりにも優しくて、観ている間は自然と気持ちが一家の方に傾くけど、でもそれじゃダメなことを観ているこちらは知っているわけじゃないですか。賢いスイミーは皆で集まればマグロにだって食べられないというけれど、でも本当は、正しい教育にアクセスできればマグロのサイズまで大きくなれることを知っている。祥太は絶対に、少なくとも自分で生きていけるようになるまでは絶対に信代と治の元に戻ってはいけないし、その当たり前の正しさをもって彼らの情を殴らなければいけないのは辛い。
映画のラストはゆり(佐々木みゆ)が団地の廊下のフェンスの外を見つめるところで終わるんですけど、その姿はただ座り込むしかなかった半年前とは違い、フェンスの外に世界があることを、ビー玉の中に海をみる力を知っている。もう少しでフェンスに手をかけて自分の力で越えていけそうにも見える。誰かがやってきて、その気配に気付いて顔を上げたようにも見えるし、希望は示されている。だけどやっぱりあまりに小さくて、小さいが故に死んでしまった子供がいることを観ているわたしは知ってるんです。仲間に出会う前、スイミーの兄弟はみんなマグロに食べられてしまっていて、それはつまり小さくて弱かったから死んだわけです。わたしは心が狭くて性格も悪いしあんまり善い人間ではないけど、それでも目の前で見知らぬ子供が井戸に落ちそうになってたら助けるぐらいの善良さは持っているしちゃんと働いてちゃんと納税して、たまに赤信号ぐらいは渡るけどもちゃんと法律とルールを守って生きてるんだからそれで赦してくれよって思う。アフリカで餓死する子供とか、この日本でご飯が食べられない子供とか、毎月高い税金払ってたまに小銭を募金箱に入れたりしてるんだからそれでなんとかしといてって思う。わたしの良心に揺さぶりをかけることを、後ろめたさを背負わせることを感動の代替にしないでほしい。

6月6日以降にこの作品を観たなら、嫌でも今話題になっている事件*2のことを想起せざるを得ないわけですが、もし事件のことがなければ、ラストシーンにもっと純粋に希望だけを見出せたのかな。ゆりに関しては監督が想定したものとは違った観られ方をされてるだろうし自分もしてるけど、こればっかりは記憶を消して観ることはできないので分からないです。最後にゆりのカットになって、あ、全然オチついてないけど多分ここで終わるわって察したらその通りに終わって、ダメ押しでエンドロールの曲までジャーンとかババーンとかなんかそういう終わりっぽい音がなくスッ…と途絶えて劇場が明るくなった瞬間に現実が後ろから殴ってきてしにそうになった。嫌だな。このタイミングなことも、それは氷山の一角で年間何万件も相談されるほど虐待が起きていることも、それを見ない振りして毎日生きてるのも、実際にしばらくしたら忘れてしまうだろうことも全部嫌だ。
ただ、観客の首根っこ掴んで、あなたの足元に小さくて弱いために死にそうな小魚たちがいますが今あなたに助ける力はありませんと突きつけるのは、それを自分の記名で行うのは、ものすごく胆力がないとできないよなあとは思います。映画に限らず、世の中に面白い作品を生み出す人はいっぱいいるけど、冷酷になりきれずに作中に救いを入れてしまう人はけっこういるし。この作品が世に出ることで世界は少しでも良くなるのかなあ。そう信じて作るしかないのだろうか。そう信じるしかないし、万引き家族で儲かるだろう分で、また次の作品も好きに撮ってくれ。

北条保役の山田裕貴はいろんなところで「虐待してそうな顔」って誉められてるのを見かけて笑ってしまいました。虐待してそう顔 is Beautiful。でも本当にその通りだし、孫ちゃんの整った顔のその下の腹の中に溶鉱炉抱えてそうな危うい感じがめっちゃ好きだし、だから合田雄一郎をやってほしいって100万回言う~!ぼく明日を上回る出番の少なさでしたが、公開されてる場面写真の中に作中にないカットもあったので、もしかしてもっと撮影してあったのかなあ。だとしても観て楽しいシーンじゃないような気配がプンプンするし、そうじゃないシーンだったとしても無駄に虐待父に理由付けされるのもそれは違うと思うのでこんぐらいでいいのかな。過去のインタビューか何かで自分の声にコンプレックスがあるともとれる発言を読んだことがあるのですが、冒頭の罵声のシーン、もっと低くて太い、わかりやすい粗暴な声だったら罵声の記号として流してしまいそうなところ、あのかわいい声質がめちゃくちゃ心に引っかかるように効いてるので、孫ちゃんが自分の声をこの声で良かったなって思えるひとつになっててくれたらいいなあ。
顔といえば祥太の聞き取りを担当する刑事(高良健吾)が、ザ・正義という顔面をしていて良かったです。スーパーの屋上でやってるヒーローショーのレッドがマスク脱いだらあの顔で笑ってそうって感じの顔。板きれに正義って書いた書き割りのごとく正しい顔をして正しいことを言ってくれるので小市民としてはほっとした。駄菓子屋の店主(柄本明)も作中の良心だけど死んじゃうしね…。

fujipon.hatenablog.com

この記事のおかけで文化庁助成金、儲かったら返還するルールなのを知りました。あげっぱなしなのかとばかり。ちゃんと運用されてるじゃん~!今孫ちゃんの出演作で一番興収いいのってホットロードの25.2億円のはずなんですけど万引き家族はそれを越えそうなのでそれはとても楽しみです。出番少ないけどな~!万引き家族観たよって話をしたら、明らかに他の映画より周囲の喰いつきが良いし普段映画の話をしない人までが話すようになると社会現象だ?!って感じがする。自分の好き嫌いとは関係なく、推しの出てる作品の出来が良くて流行るのは無条件で嬉しいです。

*1:翌日の挨拶でも履いてたので私物かも

*2:もし自分が何年後かにこのエントリを読み返したときにどんな事件だっけ…となることが嫌なので記しておくけど、2018年3月に目黒区で5歳の女の子が両親からの虐待で亡くなった。6月6日に警察が女の子が残していた反省文を公開したことで、ここ最近はずっとその事件について報道されている。