強く生きる

HiGH&LOWと山田裕貴関連用。本業はオタクです。

ボーダーラインはロマンでできてる(ネタバレ感想)

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まさかの開演時間勘違いして舞台挨拶を見逃し、本編のみという体たらくでしたが観てきました。面白かった!さすが俺たちのAMG!さすが俺たちのイケタニマサオ!!観たあとのツイートから。ネタバレありありです。

・ボーダーライン、和製ファイトクラブだなという印象。甲本雅裕が半端なくかっこいい。そりゃ惚れちゃってなんでもしてあげたくなる。ちなみに名前書いてないと車の見分けがつかない女には車のシーンは割とポカーンでした

・ボーダーライン、なんかすごそうな車がぽこぽこ出てくるけどまったくわからないので、走るシーンでカーグラTV的に古谷徹のナレ入れて欲しいですね。そして愛と情はすべて車で使い切ったのか、ひたすらに人が…なイケタニマサオ脚本がいい。あとはただひたすら甲本雅裕がかっこいい。かっこいい!

・一方で紅井レオやキヴィマキはガチバン闇金ドッグスと世界観を繋げるためにいただけって感じ。レオがアベルの過去語るところは煮詰めに煮詰めたイケタニマサオ節って感じで好きだったんですけど。あのラストだともし次があるならそれは新天地の話になりそうなので、この後どうなるかは純粋に楽しみです

・あ、あとボーダーラインですごく良いなって思ったの、アクションシーン。重そうで鉄の匂いがして、ガチバン(ショーっぽい)、デメキン(漫画的かっこよさ)、ボーダーラインの中ならわたしはボーダーラインが一番好きですね

とにかく遠藤さん(甲本雅裕)がかっこよかったです。かっこよすぎてやばい大丈夫か死ぬんじゃないかと思いながら観てたら全然大丈夫じゃありませんでした。知ってた。出てきた瞬間に死を察するレベルのかっこよさ。役どころも本人もかっこいいうえに青島コート着てるんですよもうそれだけでかっこよ度+150%のバフが常時かかってるようなもんじゃないですか。生き残れるわけがねえ。踊るで育った人間なので甲本雅裕というと湾岸署の入口で棒持って青島刑事を見送ってる人ってイメージなんですけど、約20年後、今度は青島コート着てヤクザにすらなりきれなかった半端者の役やるって感無量すぎる〜!あとですね、観てる途中にあっ…て気付きを得たんですが、前に孫ちゃんとNAOTOさんの顔の下半分が似てるってエントリを書いたんですけど、甲本雅裕も同じ下半分してるんですよ…嘘だろ…なんかもう自分の好みがワンパターンすぎて、きっと前世であの口と鼻と顎のラインを持ってて青島コート着てて前髪重めのもさもさ頭の人に産湯を使われたんだなって悟りました。多分もう一生好きだわ。
舞台挨拶時、監督がわざわざBLじゃないよって言及したらしいんですけど、物語はほぼアベルと遠藤さんのお互いへの感情で成り立っていました。ちなみにレオとはなんにもないので安心してください。ストーリーとしては、ハマで不良として名高い「混血のアベル*1がたまたま遠藤さんに助けられたのをきっかけに更生して車の修理工になり、客のスーパーカーを使って夜な夜な遠藤さんから頼まれた正体不明のブツの運び屋をしていたところ、ヤクザに追われてる紅井レオを拾ったことをきっかけに均衡が崩れ…という流れです。で、実は遠藤さんは元ヤクザで、弟分だった広澤(遠藤要)に裏切られて組を追われ、今は病院から裏ルートで胎盤を買い取り、アベルに運ばせて稼いでいる人なんですね。女の股から落ちたもので稼ぐ元ヤクザって完全に忠臣さんのifじゃん!名前も似てるし…今まで、闇金ドッグスはガチバンのスピンオフという位置付けだったのが今回のボーダーラインを合わせてAMGアウトロームービーユニバースという括りになったんですが、遠藤さんはどこまで忠臣さんを意識したんだろう。闇金1で忠臣さんは最後まで筋を通したわけですけど、小中に金を返せなくなって何かに膝をついたのが遠藤さんなんですよね。一つのシリーズを生んだ忠臣さんと真逆の人間を別のシリーズの一作目で人柱のごとく埋めるって最高にエモい。ありがとうイケタニ先生&飯塚P…
まあとにかくアベルはそんな遠藤さんのことが好きで、遠藤さんもアベルのことが好きなんですよね。アベル→遠藤さんの関係は自分がそう変わりたいという憧れの対象としてはファイトクラブっぽいし、二人がお互い全く噛み合っていないという点では賢者の贈り物のようでした。アベルは遠藤さんを助けたかったのに、助けた結果からアベルを守るために遠藤さんが死ぬっていう。
峠攻めたり豆腐運んだりする車かっけー話だとばかり思ってたら、がんがん人が死ぬのでめっちゃびびりました。ワイ◯ドヒーローズかよ。人を殺すより死体を消す方が大変だって植野会組長も言ってるのに、ヤクザの人たちが考えなしにバカスカ殺していくので、結果として遠藤さんが元弟分のとこに単身カチコミに行くんですけど、その時の武器はなんと日本刀です。なお、後を追ってきたアベルの武器はスパナです。遠藤要はさすがプロのヤクザだけあってピストルもってて、それで遠藤さんを倒すんですけどアベルが来た途端、拳銃投げ捨てて日本刀に持ち替えるっていう。今は21世紀だし昭和どころか平成も終わるし、ここはSWORD地区じゃねーぞ?!まあ弾切れだったのかもですけど…そんなアナログな戦闘なのにヤクザみんな死ぬし、遠藤さんも死ぬ。ちなみに車ではねるという選択肢はなかったのでやっぱりここはSWORD地区ではないっぽい。ボーダーライン地区の最強武器はスパナです!ちょうど、この映画を観る前後に三宅乱丈先生のイムリを一気読みしてまして、この作品もエンドレスに憎しみが憎しみを生む地獄を作るためにひたすらに人が死ぬんですけど、そこに1ミリもロマンはないんですよね。容赦なく、物語のために死んでいく。男性の書き手にあって、女性の書き手にないものは良くも悪くもロマンだと思ってるので、イムリの作者が女性だと知ってものすごく納得しました。一方、ボーダーラインは男の男による男のために作られた映画なので、みんなロマンに殉死していく。ロマンに満ちた犬死の博覧会でした。意地とか義理とか情だとか、ほんの一瞬の熱情のために、後から落ち着いてよくよく考えたらそんな大事でもないことのために死ぬ。最初、この物語にボーダーラインというタイトルが付いてるのがしっくりこなくて、素直に捉えるなら遠藤さんは一線を越えたし、アベルには越えさせたくなかった、なのかもしれないけどどうも違うなーと。多分、境界線の内と外の話ではなく、みんな境界線の上を歩いてたんじゃないかと思います。レミゼの終盤で欄干の上を歩くジャベールのように。レミゼでは境界線の両側はそれぞれ生と死だったり善と悪だったりするわけだけど、ボーダーラインの両サイドはきっとどちらも無意味な死です。遠藤さんにとって、南の島を手に入れることも、日本刀一本でヤクザの集団にカチこんでくことも死に場所探しという意味では同じだったんだと思う。落ちるのが境界線の右か左かというだけで。イケタニ脚本の何が好きって、底辺の人間を描きながら否定も肯定もせず、ただありのままにそこに「ある」ことを描いてるのが好きなんです。目を閉じて欄干の上を歩くような生き方に意味なんてないし、でもそれをすごく好きだと思う自分がいる。それはなんだと聞かれたら、やっぱりロマンだと呼ぶしかない。

 

以下はキャスト別に思ったことなど。

我妻アベル(藤田玲)。第一印象がギャラリーフェイクかよ、なんですけどこの人とつねくんさんが同じ事務所っていうのすごく分かる…ってなりました。藤田さんもカテゴリ跡部様じゃないですか?加藤和樹もそうですけど、バンドのボーカル感ありません?詞は書くけど曲は書かないタイプ…って思ってたら本当にバンドのボーカルで詞だけ書いてる人だったみたいでめっちゃ笑った。なぜか脱衣シーンがある。もっとシャープな人かと思ったら意外に素朴な雰囲気もあって、運び屋してるのがなんかよかったんだよって言うとこの語彙力のない感じが切なかった。
遠藤春男(甲本雅裕)。遠藤さん、下の名前春男って言うんだ…しつこいようだけど本当にかっこよかった。南の島に呼んでやってもいいって言うの、ズルすぎる。あんなこと言われたらそりゃあアベルは遠藤さんのこと好きになっちゃうじゃん!
紅井レオ(荒井敦史)、ジョンキヴィマキー(副島淳)。二人とも面白かったけど、ほんと世界観を繋ぐためだけにいたって感じなので次回に期待するしかない。レオが話の進行に絡んだのってヤクザの根城教えてくれたことだけでは…?しかもそのあと俺たちも行くかって言ってるのに別にどこにも行かないし。これがレオレオ詐欺か。実は後から来て後始末してくれたりしたのかなあ。忠臣さんの縄張りの例の屋上にずっといるのではやく忠臣さんと対決してほしいです。
健太(西川俊介)。ワンコかわいい!!!!もう出てこないなんて嘘でしょ…でもデメキンフルボッコにされた後に二階から投げ捨てられた人が次の日には自力で歩いてたことにちょっと違和感だったので、やっぱりフルボッコにされたあとビルから投げ落とされたら人は死ぬんだなっておもいました。
車。本作のサビだと思うんですけど、なんせセダンを車のメーカーだと思ってたレベルの女なのでかっこよさを分かってあげられなくて申し訳なくなりました。車シーンの感想が「安楽亭…」しかない。あの安楽亭わざとだとしたら賞賛する。

*1:この辺の過去バナをレオの荒井敦史さんがペラペラ喋るんですけどそこが最高にイケタニマサオ節でベネ