強く生きる

HiGH&LOWと山田裕貴関連用。本業はオタクです。

安藤忠臣には選択肢がない(闇金ドッグス6ネタバレ感想)

忠臣さんドリ女は元カノによって400万のダメージを受け死亡しましたが、
6の忠臣さんのかわいさに1500万のラブを得て蘇生し、第2のドリ人生が始まりました。

っていう感じでした。素直な感想として面白かった。正直な話、孫ちゃんの出演作は必ずしも全部が手放しに面白いとは言えず、まあこれだけのペースで出てたらそれはもう当たり外れあって当然なんですけど、闇金ドッグスは6作もやってて、好き嫌いはありますが、面白さにおいては全部一定の面白さをクリアしてるってすごくないですか?!予算もスケジュールも相当厳しいだろうにちゃんと毎回90分の娯楽としてきちんと成立しているので、そもそも面白さの定義とは、とかプロジェクトが大きくなると予算も人も時間も増えるのになぜか出来上がるものがしょっぱくなる仕組みとは、とかなんかそんなことにまで想いを馳せてしまいました。という訳で闇金ドッグス6のネタバレ感想です。

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前回の記事を書いた直後ぐらいに予告や追加の場面写真が出て、元カノの「久しぶりだね、安藤」のセリフに「さんをつけろよ借金女!」とわめいてみたり、場末のキャバレーで元カノの前でおっさん殴る画像や昭和のロマンポルノみたいなラブホ画像に発狂したりしていました。ラブストーリーなのはもう受け入れてたけど、こんなんじゃないって思った。じゃあどういう恋愛してほしかったかって自問した結果、パステルカラーのニットアンサンブルに花柄のミモレ丈のフレアスカートをはいて、栗色のふわっとしたセミロングの髪を揺らしたぱっちり目のかわいい女の子と赤レンガでパンケーキ食べたり、みなとみらいで象の鼻ソフトクリームを食べながらちょっと居心地悪そうにしてる忠臣さんを見たかった。いかにもなラブホで、昭和から来ましたみたいなスリップ姿の人妻との事後シーンじゃなくて、東横線沿いの築浅のワンルームで、ジェラピケ着た彼女にごはん作ってもらったり、室内禁煙だからと追い出されてベランダでタバコ吸ってる忠臣さんが見たかった。そういう夢みたいなかわいい恋愛をしてほしかった。

西原亜希さん演じる忠臣さんの元カノ=未奈美がとても良かったです。もちろんすごく綺麗な方なんですけど、ちょっと古めの美人だしなにより不幸顔ですよね。綺麗だけれど、どこまでも疲れた人妻でどこまでもダメンズホイホイだった。最初は大振りなサングラスを着けて出てくるのでセレブ設定かな?って思ったんですけど、バッグはいつも同じものを使っているし、アクセはプチプラだし、服も安そうなものを何度も着まわしてた。スリップ(笑)だけちょっと高そうだったけど。誰のこだわりなんだよ。
学生時代に付き合ったのは字も書けない割り勘の計算もできないバカヤンで、変な商売立ち上げた挙句悪徳金融業者に骨までしゃぶられるようなバカな男と結婚して、夫の仕事のことも借金のことも何も知らないわ、いかにもな連れ出しスナックでそうと知らずに働き始めるわ、はっきり言って4の元子を軽く上回るダメ女でした。助けに来てもらっておいてなじるし、忠臣さんにも旦那にも流されるし、本当になんだよこの女って思いっぱなしで、でもそれが忠臣さんの相手なんだなってものすごく納得した。よいおうちのかわいいお嬢さんと幸せなラブストーリーなんて無理だった。知ってた。真っ黒な債権を買い取って「俺たちにはこんな債権しかまわってこない」というセリフがありましたが、忠臣さんに、かわいい恋愛ができる日は来ない。

ちょっと前になぜ底辺ヤンキーものに惹かれるのかわからないという記事をあげたんですが、それについてずっと考えていて、思い当たったことがあります。すごいウエメセかつ差別的な話なので人によっては不快に思うかもしれない。先に謝っときますすみません。
わたしは小学校の途中まで大都市圏のそこそこいいとこ、東京でいうと世田谷みたいなところで育って、その後家族の転勤でいわゆる地方都市に引っ越し高校卒業まで暮らしました。そこで初めてヤンキーとかDQNとか言われる人達の存在を知ったし、普通にクラスにもいた。小学校の時はみんなで一緒に遊んでいたのに、中学に入って二年生の夏休みぐらいからでしょうか、何人かが金髪になったり眉を剃り落としたり、そして学校にあまり来なくなった。大体お家が工場だったりお母さんしかいないご家庭だったり。それから、高卒で働くために進学先に工業高校を選んだ女の子たち。その中でよく一緒に下校したSちゃんは弟がいて、弟の方がバカだったけれどそれでも男だから本人が望むなら大学にいかせるし、そのためにはSちゃんを大学にやるお金はないし、働いて弟のためのお金を入れて欲しいと言われているのだとききました。高校で久しぶりに会ったSちゃんはもちろんヤンキーになってた。住んでたマンションの大家さんだったおばあちゃんに、女の子は大学なんていったら結婚できなくなると言われたこともある。お祭りの盛んな地域だったけど、お神輿に乗って太鼓を叩けるのは小学5・6年の男の子だけで、女の子は不浄だから(と言われた)太鼓に触ってはいけなかった。太鼓役の男の子は数人だけど、その練習をさせる地元のおじさんは10人以上いて、お祭り前の二週間ほど毎晩太鼓の練習からの酒盛りをしていて、子供会に所属している子供のお母さんは、子供の性別が男でも女でもおじさんたちの宴会の準備と片付けを交代でするルール(もちろんうちの母も)だった。わたしは勉強だけはできたので地元で一番の進学高に行き、さすがにそこは女の子もみんな大学に行くのが当たり前の世界だったけど、阪大や関東の国公立(地方は国公立信仰が強い)に受かる偏差値なのに、女の子だから自宅から通えるところで、と志願先を一番近い国立大に下げる子は何人かいた。今、思いつくままにあげたこれらの全てがわたしには理不尽でした。でも、別にこの土地の人間ではないし、両親はわたしが男でも女でも大学には行くのが当たり前という考えだったし、最初からこの土地を出て行くと確信していたので、その理不尽と戦う必要はなかった。わたしが関東の大学に進むのと同時に親も転勤で別の土地に越したのもあってもう縁遠くなってしまったし、そこそこの大学に行ったのでそれ以降の人生でヤンキー的な人達との接点はない。
別にその人たちが不幸だというつもりではないです。はてな的に言えば東京で消耗し続けてるわたしと違って結婚して子供育ててずっと幸せかもしれない。もちろん不幸になった人もいるだろうし、それはもう人それぞれだけど、ただ一つ言えるのは、彼や彼女たちには選択肢が少なかった、あるいはなかったということ。西原理恵子はまさにこの「地方の女の子」から自力で脱出した人で、ずっと女の子に向けて自力で生きることを教える作品を描き続けてきて、今年もそのものずばりな本*1も出したけれど、具体的な生き方の話よりもあなたには選択肢があるんだよと言いたいように感じるし、その裏には当事者ゆえの理不尽への怒りがある。わたしにとってはこの理不尽は他人事でしかなかった。そもそも、こういった歪みをそれなりに理解したのはずっと大人になってからで、当時のわたしは以前に住んでた場所との比較でしかこの理不尽さを認識できなかったし、周りの誰にも話すことはなかった。映画「下妻物語」で、深田恭子演じる桃子の生い立ち紹介で尼崎で偽ブランド品を売るシーンを見たときにやっと「分かる」って思いました。自分が感じていた輪郭のない理不尽さ、すぐ横にあったけれど、わたしの問題じゃないから、解くことも答えを知ることも永遠にない。だから同じものを探して、他の人もそれを知ってる、確かにあったんだって確かめたいのだと思います。賞賛したい訳ではないから、イケタニ脚本の底辺クズを否定もせず肯定もせずただ淡々とありのままに描くところがすき。観続けたところで答えが出ることでもなければ、完全に娯楽として消費している自覚もあるんですけど。選択肢がないということ、選択肢があることを知らないということ。それを理不尽に感じるのは正しいことだって、昔のわたしに教えてあげたい。

翻って、果たして忠臣さんには選択肢があったことがあるのだろうか、と思います。ヤクザになったのも闇金業者になったのも、ただ生きるための結果だった。前にツイッターで「忠臣さんてお店でメニュー選ぶことができないから、毎日日替わり定食出すお店でご飯食べてそう」的なことをつぶやいたんですが、忠臣さん、絶対に複数の選択肢から「自分の欲しい物」を選ぶの苦手そうじゃないですか?
これまでの人生で、誰か忠臣さんに右の箱と左の箱、どっちが欲しい?って選ばせてあげた人はいたのかな。仲介業者の早乙女から債権を買い取るシーン、最初に薦められた2件をパスして自分で手に取ったものを買い取ってたけど、あれも1億円の債権がラスファイには買えないことは早乙女は百も承知なわけで。忠臣さんが自分で選んだようで、実際には最初からあれを選ばされてたんだろうなって思います。どこまでも選択肢がない。1の小中さんなんかは、自分に膝を折るか這い上がってくるか、どちらを選ぶかを楽しんでたように思うけど、忠臣さんにとっては答えはひとつしか見えてなかったから選べた訳じゃないですよね。

人間って、やった後悔はすぐに忘れるけどやらなかった後悔はずっと引きずるそうです。わたしもそれすごく分かるんですけど、やらなかった後悔を何度も反芻した結果、次に同じような状況になってしまったときに前のめりになって余計大きな判断ミスしちゃうこともあるあるだと思うんです。未奈美も、ずっと鍵持ってたぐらいだし、絶対に結婚するときに忠臣を待つか、忘れて新しい男の方に行くかの選択肢で迷ったときに、「待たない」を選んだことをずっとどこかで後悔してたはずです。そんな中、10年ぶりに元彼に再会して、色々助けてもらって、夫とも心が離れてしまうだけの出来事があって、そうして忠臣さんの所へ戻ろうとする。でもそれ、完全に判断ミスなんですよ。作中、未奈美が借金返すためにバンコクで片目と内臓売ってきた夫の車椅子を押しながら(文章にするとすごい展開だな)、幸せそうに散歩する親子三人連れを見るシーンがあるんですけど、そうなりたいなら元ヤクザで背中に阿修羅しょってる闇金業者の男なんて選んだらダメでしょ。子供できたところで家族でプールにも温泉にも入れないじゃないですか。その後、家を出て忠臣さんの所へ向かうときに白いワンピに白いカーデでパールのアクセつけてるのもしんどすぎた。選ぶべきはそっちじゃないだろバカ女ー!お前にはすべてをリセットしてやり直すっていう選択肢があるんだぞ!結果的に忠臣さんが行かなかったことで、その選択になったはずですが、幸せになれるのかな。無理そう。未奈美ちゃん、高性能ダメンズホイホイすぎる…。

一方、忠臣さんは迎えに行くか、行かないか、迷ったそぶりはまったくなかった。行かないって結論しかなかったんだなって。身を引いたという感じでもなく、ただその未来ははないんだなって。迷うシーンがなかったことはもちろん、電話の後の忠臣さんを一切写さずにいきなりライターのシーンに繋げる演出は心の底から闇金ドッグスが好きって思いました。忠臣さん、割とかっこいいジッポを使っているのにラブホのしょぼいライターを持って帰ってくるところも、その火がつかないところも、ただただしみったれていて、寂しい。

須藤司が忠臣さんに「(闇金は)野良犬どころかドブネズミじゃないスか」と言うシーンがあって野良犬もドブネズミもよくない?って思いました。ガチバンの忠臣さんは立派な門扉につながれた番犬だったのが、野良犬だろうがドブネズミだろうが自分の足を動かして食べていける身になれたのが闇金ドッグスの忠臣さんな訳じゃないですか。4・6と過去が追いかけてくる話だったけど、そろそろ次は闇金業者として活躍する話が観たいです。ブラックジャック方式で最後「はい、ラストファイナンス」で終わるやつ。債権者がキモだけど闇金から借りてまで若俳に貢ぐ女とか観たすぎるんですがどうですか。地下アイドルやっちゃったから無理かな。今回、ラブストーリーの方に尺取りすぎて悪人成敗パートはイマイチ雑だったし。どんな過去があっても、選べる選択肢がなくても、今の忠臣さんは自由だよ。

 


以下、本編や舞台挨拶21時回のことなど。媒体さんありの回は安定の藤本さんの記事がオススメなのでそちらを!あと今回初めてTV媒体(日テレPON!)が入ったらしく、すごい喜ぶ孫が見れて祖母は嬉しい。

spice.eplus.jp

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・ラスファイの住所は東京都府立市錦町1-13-12。横浜じゃないの…?
・ちなみにラブホはここです。ライターほしい。
・忠臣さんのノートPCはまさかのMacBook。嘘でしょ。
・スナックの客殴る忠臣さんはものすごいテキパキしててめちゃくちゃ良かった。1の良夫の部屋に入る上着脱ぐネクタイしまうの流れもだけど、ガチバンの忠臣さんの喧嘩は、強さを誇示できることを楽しんでる感があったのに比べて、闇金の忠臣さんは「処理」って感じするのめっちゃ好き。
・ギャンブル狂客を殴るところ、1回目がすごいしっくり来ただけに2回目いらないと思った。精神安定のために目の前の人間殴るメンヘラは金山龍太くんがいますし。
・先行場面写真で金庫の上にキヴィマキ(概念)居ると思ったらちゃんと触れられてた。舞台挨拶でも長谷川忍「3人目として次も出たい」山「実は3人目はもういるんで…」
・客席からの質問「長谷川さんは闇金ドッグスどこから見ました?」長「みてない。実は6も観てない」P「ちょっと!」
・客席からの質問「忠臣さんの刺青が阿修羅像なのは?」監督「真っ先に阿修羅が浮かんだんだけど、戦いの神なのと、手が何本もあるのがいいかなって」(その後、別の話で)山「人間だから色んな顔があって、だから阿修羅なのかも」
・青「今回の撮影は忠臣のラブストーリーで、ウッヒョーってかんじ」
・山「4・5の終了時に次はラブストーリーと聞いて、脚本から意見を言わせてもらった。忠臣がずっと喋っていたのをこんなに話さないです、と未奈美に変えてもらったり」
・青「今まで忠臣は童貞だと思って撮影に臨んでた」
山「さすがにそれはない笑 でもお金で買ったりとかしてたかもしれないとかは考えた」ここでニュージェネ2の女衒業にからんだ話が聞けるかと思ったけど、長谷川さんのツッコミ*2で中断してしまいすごい悔しい…わたしテレビ見ないんで知らない人なんですけど芸人さんなんですかね?話に絡むなら過去作見てからにして!
・一方、ガチバン・闇金ドッグスすべて観たという西原さん「忠臣のラブストーリーは見たくないって思った」山・監「えっ!?」膝を連打するわたし。
・女が恋愛もの好きなのは否定しないけど、それと好きなキャラの恋バナみたいかは別問題なんだよ~~それ踏まえて作れとは言わないから、そういう思考なことだけは知っててくれ~~~
・西「未奈美が知っているのはガチバンの忠臣なので、闇金ドッグスまで観てしまっていいか悩んだ。最初の撮影がラストシーンで、そこまでに山田くんと会うことができなかったので、その会えない気持ちを載せて演じた」
・(締めの挨拶にて)山「ここにいるのは闇金ドッグスのファンだと信じて言いますが、僕のどうでもいいツイートより、闇金ドッグスのRTやいいねが伸びないことを悔しく思うこともある。(中略)他の現場で得たものを、闇金ドッグスの現場で発揮してもっと大きくしたいのでよろしくお願いします」

*1:女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと

*2:忠臣の性事情なんてどうでもいい、とつっこんでいたけど、商品に手を付けてたかどうかでニュージェネ2、特に非常階段のシーンの見方が変わるし、ファンにとってはとても大事な情報でした。