強く生きる

HiGH&LOWと山田裕貴関連用。本業はオタクです。

その企画書、パワポでください(たたら侍ネタバレ感想)

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【冒頭からネタバレ有、ご注意ください】

まず最初に、わたしこの話嫌いじゃないです。むしろ割と好きなカテゴリ。簡単に言うと、ド田舎の製鉄会社の社長の息子に生まれた伍介ちゃん(青柳翔)が俺、第一次産業なんかやってらんねー!鉄作るんじゃなく鉄製品を使う側になりてえ!勝ち組側にまわりてえ!って自分探しの旅に出るんだけど、特に鉄作り以外に何のスキルもなく、世間の動向も世の中の怖さも知らなかった故に、何一つできずひたすら逃げて逃げて、さらに自分の判断ミスによって村に災厄まで呼び込んで、大事な人を何人も死なせて、最後無我の境地に至るっていう話です。ゆとりとかモラトリアムとかそういうキーワードで宣伝したっていいジャンルです。
最初、FF8みたいな構造だなって思った。わたしFFは6と8が好きなんですけど、8ってスコールから見たスコール個人の物語なので、世界で何が起こっているのか、魔女はなんなのか、とかがちゃんとプレイヤーに示されなくてわかりづらいから低評価なんだと思うんです。スコールが知らないことはプレイヤーにも示されないし、スコールがリノアのことで頭がいっぱいだから後半リノアの話しかしてないって踏まえてプレイすれば割と世界に入り込みやすいかと…。まあたたら侍もそんな感じで、ちゃんと示されてはいるんですけど、今がどの時代だとか、新平が村長の息子だとか、真之介様が何者なのか途中で参加したのは何の戦なのかとか、どれもこれも説明はされない。伍介の見た、伍介の世界の物語なので、伍介が知らないあるいは言うまでもなく伍介が知ってる話は出てこない。
はっきり言って伍介は愚かです。無知で無力で、ただ村を守りたいという気持ちがあるだけで知恵も経験もないので逃げまくりだし、あっさりと騙され付け込まれすごいたくさん人を死なせる。この伍介ちゃんが方々で頭ぶつけまくってくのは、叩いて叩いて鍛える刀になぞらえてるんだろうな。伍介という鋼の原石(という表現も変だけど)が一本の刀になるまでを描こう、という話なんだろうけど、最後たどり着いたところが献上用の刀というのは最高に皮肉が利いていて良い。世界が平和になった象徴であるけれど、振るわれることはなく、にも関わらず刀であることからは逃れられない。この話、救いはないです。最後に雪で遊ぶ子供達のシーン、おいおいそのカットでむりくりいい話エンドにするつもりか?と思ったら、伍介の幻だったのはめちゃめちゃよかった。世界は残酷で、時間は不可逆だ。ポジティブにとらえれば、もともと側にあったものが一番良かったことに気付いたという往きて還りし物語の構造だけど、ネガティブに言えば己に課せられた運命からは逃れられないという話だし、わたしはそれが好き。しんどい話は嫌いだけど、寂しい話は好きなんです。
そうそう、言っても伍介は村下(鋼作りの親方みたいなポジション)として生まれて、絶対に村下になれるエリートなんですよね。村の中なら。作中なんども出てきた鋼作りの下働き勢よりずっと恵まれた身分な訳ですよ。下働きも2パターンいて、着物きてあれこれ作業する人と、ふんどし姿でずっとたたらを踏んでるだけの人たち。このおそらく一番下っ端であるふんどし勢と伍介のエピソードも見たかったなー。でも多分彼らは伍介の世界には存在しない人だからエピソードもないんだろう。そこまで徹底したのなら超クールだ。

問題は、なぜこの脚本にここまでの予算をつけたのか?ってことです。なぜだ。本当になんでなんだ。あえて調べずに印象で語りますが、監督、今までここまでの予算の作品を撮ったことない方じゃないでしょうか?コンビニ差し入れるぐらいなんで、とにかくセットもエキストラもすごい。たたらの村も、製鉄の工場?みたいなとこも、町並も途中参加した早乙女太一軍の陣もすごい金かけて作ってあるし、エキストラの数も衣装もはんぱない。船ももしかして作った?!と思って震えたけどさすがにそれは借りてきたみたいで、エンドロールに借り先の名前があって安心した。でも運ぶだけでもめちゃ金かかるよなあ…で、そのすごいセットやらなんやらが作中、余すところなくうつっています。画面切り替わるたびにクレーン使ってセット全景、そしてその至るところに配置されちゃんと衣装も着て演技もしてるエキストラのみなさんをヒキでしっかり収めたところからぐいーんとクローズアップして主要人物のアップになるというのを毎シーン毎シーン、もう毎シーン必ずやるんです!超かったるいわ!!!!!良いエンタメは展開が早くてテンポが良いが持論ですが、恐ろしくテンポは悪いです。なので監督がお金かかったセットが嬉しくて、写さないのがもったいなくてどうしても毎回収めたくなっちゃったのかなって思った。風景のシーンもわざわざカメラ動かさんでええやろ。そんなにクレーン使いたいんかーい。とにかくカメラワークがダルい。伍介の世界の物語というセカイ系といっていいぐらいパーソナルな話なのになんでこんな大作みたいなお金のかけ方撮り方しちゃったんですか。この話なら、いっそ手持ちカメラでずっと伍介一人を写し続けるような映像でみたかったよ。村を出て誇らしげに船に向かうとき、逃げ出して再び村を辿り着いたとき、新平を死なせたとき、真之介を死なせたとき、伍介がどんな顔をしているのか、もっとねちっこく見たかった。こんな大作とは真逆のジャンルの脚本に、誰が多額の予算つける判断したのか不思議でしょうがないです。めちゃくちゃ金かかってることは分かる。どう考えても動員では採算合わないし、ハイローみたいにライブで回収できるものでもない。ビジネスとしてこんな金の使い方して大丈夫なのかって心配しながらエンドロール見てたら、「たたら侍を支える会」としておそらく島根地元企業と思われる法人名がものすごい大量~~~にあげられてまして、さらに書ききれなくて「他221社」みたいな雑な紹介されてた。支えるという名の出資なんでしょうけど、もしかしてここで採算あわせてるのか。そしてそこの出資があるためにやたらめったら島根の風景が映るのか。もしそうだとしたら不幸なことだなあ…。

はいろーユニバースの創造神であるHIRO神に拝謁したくて早朝からバルト9の舞台挨拶あり回を観て来ました。登壇者が10名近くいて、まさにひとつ前の記事で書いたとおり登壇者が多い舞台挨拶は質問消化で終わっちゃって盛り上がらない、の状態だったけどHIRO神来るの大人数の回だけだったからしょうがない~生で見るHIRO神はめちゃくちゃ顔がちっちゃかったです。はいろー産み出してくれて、あと鬼邪高気に入ってくれてありがとうって念飛ばせたんで満足です。あと九十九さんはやっぱり顔がすごい好みだと思った。こういう香港スターにいそうな顔がすごいすき。マッマが実はSHUN時代からEXILEが好きで最近だと「AKIRAくんが好き」なことをはいろーにはまってから初めて知ったので、一週間遅れの母の日として連れてったんですけど
マ「やっぱりAKIRAくんはかっこいいわ~。で、あんたは誰が好きなん?」
わ「主演の青柳翔」
マ「ふーん、顔濃いのが好きなんやな」
わ「えっ、顔の濃さならAKIRAの方が圧倒的にくどいやん!」
マ「AKIRAくんは顔濃くないよ?」
この顔濃くないよ?をNANAのワザとだよ?並のきょとん顔で言われた。解せぬ。AKIRAさん演じる尼子真之介の幼少時代の派手な鎧とか、成長してからも赤で統一したお衣装で暴れまわるのは理屈じゃない原始的かっこよさがあるな。ハイローみLDHみを感じたのはそこぐらいで、特にハイロー感はないです。

ちなみにこの映画で一番笑ったのはエンドロールの「衣装提供 24Karats」です。どこで使ったんだよ!?

 

【5/22追記】

同監督の過去作「わさお」についての記事。死ぬほど笑ったしこれはたたら侍を観た人は読むべきと思ったので貼っておきます。憶測でしかないけど、ばっさばっさ斬って回る割に一滴も血が出ないこととか、なんか妙に印象に残りエンドロールでもえらい行数を割いてる田植えシーンとか、そういう不思議ポイントに合点がいった気分。

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